これまでの研究経過

これまで、主にアメリカの公共放送史を中心としたメディア史研究およびアメリカ・ポピュラー・カルチャー研究の領域で研究を進めてきた。このほか国内のコミュニティ・メディアおよび震災報道に関する共同研究に参画してきた。

本応募者は米国の大学で放送学を専攻したのち、大学院ではメディア学を専攻した。アメリカ・メディア史をテーマにアメリカ各地で資料調査を行った結果を博士論文にまとめ、「アメリカ公共放送の歴史」として出版した。大学院修了後も、非営利放送に焦点を当てながらアメリカ・メディア史の研究に携わっている。

これと関連して、女性初のアメリカ連邦通信委員(FCC)の委員に任命された Frieda Hennock (1904-1960) の果たした役割、アメリカのメディア法制史、特に公平原則およびイコールタイム・ルールの制定背景に関する法制史についての研究を行ってきた。

また、ストリート・ダンスを通して直接接してきたアメリカ・ヒップホップ文化の研究や、アメリカにおける女性のイメージの変容に大きく貢献したとされるヒロインコミック Wonder Woman の原作者 W.Moulton Marston および作画を担当した漫画家 H.G.Peter に関するジェンダー論およびメディア論を複合させた歴史研究の成果を公表している。

今後の研究計画

デジタル化社会における公共放送政策の国際比較研究

アメリカの公共放送についてのこれまでの研究を拡張し、BBC(英国)、NHK(日本)、ABC(豪州)、CBC(カナダ)など各国の公共放送が、情報媒体の転換期において今後どのように変化しようとしているのか研究を進めていく。特に費用負担のシステム革新の必要性にどう対処していこうとしているのかに着目している。この研究課題についてはすでにJSPS科学研究費補助金の交付を受けているが、covid-19の影響のために進行が遅れているので、今後鋭意挽回に努める。

デジタル化社会における知識共有のあり方に関する研究 

これまでの研究で、アメリカの放送が大学に起源を持つこと、放送の教育機能が常に意識されてきたことを強く意識することになったが、その延長として、デジタル化社会における知識共有のあり方について多角的な研究を進めていきたいと考えている。デジタル化と同時に社会の分断化・細分化が進む現代社会において、広くかつ深い知識を社会構成員が共有していくことの重要性は、これまで以上に高まっている。

現在は、欧米を中心に再評価されているExplanatory Journalismの現況についての調査に取りかかっているところである。Explanatory Journalism はSNS に親しむことの多い Z 世代などを念頭に「新たな学びの場を提供する」ことを目的として、さまざまな事象の背景知識を分かりやすい形で共有しようとする。日本にも解説報道の歴史はあるが、新たな社会状況に適応した知識共有の理念・組織・方法が求められている。公共放送に関する研究と同様に、経費をどう調達していくかという点にも着目しながら、実態調査を進めていく。

Explanatory Journalism に関する研究の先には、知識共有という点で共通の目的を持つ教育とジャーナリズムの収斂可能性についての関心がある。教育のかなりの部分とジャーナリズムとは、youtube などのプラットフォームあるいはその代替物の上で、収斂していく可能性が高いと考えている。

ジャック・アタリが予想するような分断化・コミュニティーの細分化が避けられない今後の社会において、個々のコミュニティー間での情報共有と連携を促す役割をジャーナリズムも教育も連続的な形で果たしていくことが求められる。しかし、既存のテレビ局、新聞社、研究機関、学校といった組織が現状のままでそのような役割を担うことは難しい。 今後の社会状況に合致した教育とジャーナリズムの実践、知識共有のあり方について、共同研究の形で知見を積み重ねていきたい。

英語によるコミュニケーション能力養成の具体的な手法に関する実践研究

コミュニケーション研究の内容を応用し、英語教育方法に関する実践研究を新たに開始したい。

これまで英語指導を担当するにあたり、会話活動を中心とした様々なアクティビティを準備し、授業を運営してきた。伝わる語法・文法も当然含め、学生たちに実際に使える英語を習得してもらうために、どのような授業デザインをすべきか、学生たちの反応を確かめながら工夫を重ねた。その結果、学生は音声中心の学習の大切さを認識し、アクティブに参加するようになった。動機付けの弱い学生には、英語の映画や音楽を活用して学びを深める方法を提案した。それにより、学生の英語学習の意識が変わり、卒業の単位取得だけでなく、真の学びの場としての価値を見出した者もいた。これは成功例であるが、改善の余地はまだある。既存の語学教育研究を参考に、最も効果的な教育方法を模索したい。​​

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