多様な経験にもとづく教育指導と教育への考え方
アメリカで受けた学士課程教育、アメリカの大学院への留学、アメリカのアーカイブなどでの史料研究、世界の研究者との交流、アメリカ各地での生活、さらに条件がさまざまに異なる日本の大学での教育・指導、などの経験を基にして、教育・研究への人文情報学の導入を進めつつ、これからの教育に取り組んでいく。
概論と少人数でのディスカッションを共に重視するアメリカの学士課程教育の手法を参考にしつつ、それぞれの大学の学習環境に適合させながら、学生が何を身につけたかということに力点を置いた教育指導を進めたいと思っている。
これまでの教育経験
1. 青森公立大学
ビジネス・イングリッシュ科目を担当。受講学生の英語能力・動機付けが低い中、動機付けを高め、英語能力獲得を目に見える形で実現することを目指す。英語を拒否する学生たちに苦労した。
2. 同志社大学
イングリッシュ・プレプラクティクム科目では、比較的英語能力が高く、留学を志望するなど動機付けが強い学生を指導。授業は英語で行い、発音を含むコミュニケーションの基本的訓練を行なった上で英語でのプレゼンテーションへ向けて指導した。各学生に英語での録音ファイルを提出させ、個別にフィードバックし、一定の成果を残した。
比較文化論科目では、アメリカ放送史をアメリカ社会文化史の中に位置づけながら講義した。多くの学生は非「楽単」科目に反発するも、一部の学生からは肯定的評価を得た。
サイエンスコミュニケーター・プログラムでは、英語でのプレゼンテーションに怯む学生たちに、基本を踏まえることで十分なプレゼンテーションが可能になることを示した。
3. 北里大学一般教育部
医療系学部の専門英語基礎科目で、プレゼンテーションを主とした英語コミュニケーション科目を担当。いろいろと工夫するも十分な成果は得られず。
4. 東洋大学社会学部メディア・コミュニケーション学科
ジャーナリズム論では、米国での専門基礎教育の方法にならって基本的な事項を網羅しつつ現代的な話題にも言及。選択必修・大人数科目で学習意欲を欠く学生も多い中、試行錯誤を続けている。興味関心のある学生からは一定の評価を得ている。
マスコミ倫理・法制論でも具体的な事例を用いて関心惹起を模索している。学生の反応は上記と同様。
映像メディア制作実習では、ビデオ・コンテンツ制作の基本の基本を三脚の設定のしかたやPCキーボードの使い方から始め、マイクや照明の設定も指導。年度を重ねるごとに意図したレベルの制作作品が徐々にできつつあった。グループ学習に適応できない学生の対応に苦慮した。
基礎ゼミ・2年次ゼミでは、学生のレベルに合わせた学習方法、英語能力の指導を模索している。教授陣・学生共に英語に対する意識が全般に低い中で試行錯誤が続いた。道半ばで十分な成果は得られず。
大学院での教育
ジャーナリズム論の教育には、これまでの自分自身の学習・研究と教育の経験を踏まえて取り組む。概論を重視し総合的な基礎知識を学生に獲得させるアメリカの大学の教育方法を参考に、日本の状況に即した形で導入していきたい。学生が最終的に何を学んだのかに焦点を当て、大学の掲げる理念と環境に合わせて授業デザインのチューニングを重ねていく。
日本の外からの視点を持つことを受講者に促し、文化をまたいで研究活動や実務を遂行する能力が身につけられるよう支援する。
大学院レベルでの学習・研究・交流に必要な調査スキル・発表スキル・英語スキルの指導では、米国の大学院への留学、アーカイブでの調査・研究、海外での研究発表の経験を活かす。米国でのボランティア活動、非営利組織でのインターンシップ・実務の経験を踏まえて、受講者が学術研究以外の道に進む場合には実務レベルでの英語コミュニケーション能力を身につけて修了するよう取り組む。
全学教育での語学教育
教育実践の背景には、高校卒業後渡米し、英語によるコミュニケーション能力を苦労して身につけた経験、米国の大学で英語による体系的な高等教育を受けた経験、ストリート・ダンスを通して様々な背景を持つ多様な人々とコミュニケーションをとってきた経験、大学院進学後は英語の文献と一次資料を扱い、世界の研究者たちとコミュニケーションをとってきた経験がある。これらを踏まえ、最も効果的と思われる指導を行う。
これまでの経験から日本の大学生は英語への意識が二分化していると予想する。得意な学生と嫌悪する学生。自分自身の英語習得過程と日本の大学での教育経験を踏まえ、得意な学生の運用能力の強化、嫌悪する学生の意識転換を目指した指導を工夫する。音声コミュニケーション能力獲得の具体的方法を提示し、コミュニケーション達成が実感できる仕掛けを用意する。これらを通して音声・文字双方による学術・生活コミュニケーション能力獲得を可能とする学習環境を構築していく。