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なんで英語をやるのかWhy study a foreign language, and why choose English?
最終更新 2026年9月6日
先に答えを書きます。英語をやる理由は、英語そのものにはありません。
英語が優れた言語だから世界語になったわけではないし、話者の数がいちばん多いわけでもありません。19世紀にイギリスがいちばん広い植民地を持ち、20世紀にアメリカがいちばん強かった。それだけの理由でいまの位置にあります。
それでも、いま情報も金も仕事も、英語のほうに集まっています。だから、選べる仕事の数が変わります。
「選べる」というのは、こういうことです。嫌な条件を出されたときに、断って別のところに行ける。行き先がなければ、断れません。英語ができると、その行き先が増えます。それだけの話です。
そしてもうひとつ。機械翻訳が運べるのは話の中身だけで、どこで口をはさみ、どこまで譲るかは運べません。ここは性能が上がっても変わりません。
以下は、この4行の中身です。納得できなければ、それでも構いません。ただし必修である以上は時間を使うので、使うなら理由を知っておいたほうが得です。
この授業が目指していることThe Point
自信をつける(英語できないんでー、みたいなことを言わなくていいようする)
これが軸です。
「英語できないんで」と言うとき、言っているのは英語の話だけではありません。自分はそういう人間だ、という説明を、自分でしている。それを言わなくて済む状態まで持っていく。それがこの授業の目的です。
食っていくため、でも構いません。就職に効く、でも構いません。ただ、それだけなら他の科目でもいい。語学は、できるかできないかがその場ではっきり出ます。ごまかせない。だから、変わったときに自分で分かります。
将来の武器として英語を捉え、語学学習をすすめる
英語は教養科目の単位とるためなんでーてきとうにお願いします、から脱却する(はい、単位を取りたいならキチンと訓練していってください。論理的に考えてくれよ頼むから。)
One aim of this course is to help you develop confidence in using English. Describing your English as poor can become a way of limiting what you expect of yourself. Taking the course for credit or for future employment is a reasonable starting point. Through practice, you should also be able to recognize what you can do and how your skills have developed.
この授業の前提What This Course Is
これは善意でやっていることではありません。
学生は授業料を払っています。教員は給料をもらっています。その対価に見合うものを出す。それだけです。
したがって、優しくする理由はありません。楽をさせる理由もありません。この授業の目的は、払った分に見合うものを持って帰らせることです。
この授業は、学生に好かれるために行うものではありません。語学能力を上げるための環境を作るために行います。そのうえで、コーチングをします。
ここまでを、正直な言い方にするとこうなります。下品な言い方ですみません。
俺は学生に好かれるために、授業してない。語学能力を向上させるための環境作るためよ。で学生にコーチングする。やる気がないのは学生の問題。こっちが工夫しても、やる気が出ないってのであれば、人生の判断しろ。単位を落として、来年度別の教員で受け直せ。お前の人生の結果まで責任は負えない。
善意の教育じゃねぇ。お前らの授業料に見合った対価を提供したい。
こちらがやること
「対価に見合うものを出す」と書いたので、何を用意してあるかを先に出します。
- AI英語学習アプリを、担当教員が自分で作りました。既製品ではありません。授業の外で音読や発音を練習すると、その場で自動でフィードバックが返ります。進み具合は自分の画面でいつでも見られます
- 評価基準を全部公開しています。音読の6項目も、A帯に入る条件も、can-do も、先に書いてあります
- 訓練の順番を先に示しています。量を入れる → 音読 → 感覚で構造 → 音を一致させる → やり取り
- 説明は全部サイトに出しています。音の仕組み、文の切り方、統語の入れ子、自己紹介の型、使う道具。授業で一度聞いて終わりにせず、何度でも戻れるようにしてあります
- 練習メニューを出し、記録に対してフィードバックを返します
90分は、これを踏まえて相手がいないとできないことだけに使います。
あなたがやること
- 練習する
- 記録を残す
- やり取りをする
こちらがやらないこと
やる気を出させること。やる気が出ないのは、学生の問題です。こちらが工夫して、それでもやる気が出ない場合は、単位を落として来年度に別の教員で受け直すのが合理的です。それも選択のひとつです。
学習方法で提案があれば言ってください。対応します。ただし、何もしないは「なし」です。
なまけて何もしないなら、そこは自己責任です。不可につながります。何もしなければ落単になるし、怠ければその分だけ能力の上がりは鈍くなる。結果、評価に響きます。
Providing this course is part of my professional responsibility. You pay tuition, and I am responsible for providing opportunities to learn. This includes the practice app, assessment criteria, a sequence of activities, and the explanations on this site. Your responsibility is to take part in the activities, practice, and keep a record of your work. Receiving credit requires completing the coursework.
© Koach大学の仕組みを、いちど見ておくHow the System Works
ここまでは、この授業の中の話でした。ここから先は、授業の外の話をします。なぜこの授業をこの形にしたのかは、外を見ないと説明がつかないからです。
高校で言われたはずです。英語ができると世界中の人と友達になれる、と。
嘘ではありませんが、いま必要なのはそこではありません。その前に、自分が4年間置かれる仕組みを見ておいたほうがいい。
日本の大学は、こういう仕組みになっています。
- 入試で選抜されて入る。入ったあとは、単位を集めれば出られる
- 単位は、出席と課題提出で出る。何ができるようになったかは、ほとんど問われない
- 卒業要件はおよそ124単位。1科目2単位として、62科目ぶん座れば要件は満たされる
- 就職活動は、大学での学びとほぼ無関係に進む
- 成績表に書かれるのは「単位を取った」ことだけです。何ができるようになったかは書かれない
その結果がこれです。
70.6%:大学生で「外国語を使う力が身についていない/あまり身についていない」(文部科学省「全国学生調査」)
7割が、その状態のまま卒業していきます。そして、卒業証書はそのことを何も語りません。
高校3年の時点では、こうでした。
36.4%:「英語がもっとも苦手な科目」と答えた人。全教科で最多。1年 29.2% → 3年 36.4%
苦手なまま入学し、苦手なまま卒業する。その経路が、制度としてきちんと用意されています。
大学で求められる作業を思い出してください。決められた形式でレポートを書く。用意された正解を出す。穴を埋める。それは、いま機械がいちばん速くできる作業と重なっています。その練習だけを4年続けたとき、何が残るのか。
だから、自分で証明できるスキルが要ります。大学は用意してくれません。
語学はその一つです。できるかできないかが、その場ではっきりする。ごまかせない。だから証明になります。
この授業では、何ができるようになったかを can-do の形で示します。単位が出たかどうかではなく、何ができるようになったかを書きます。大学が用意していないものを、ここでは出します。
この授業でペラペラにはなりません。90時間では無理です。ただし、困ったときに助けを求められる、分からないときに分からないと言える、分からないまま話を進めない。ここまでは行けます。これができないと、外では詰みます。
とはいえ、そう言われて素直にやる気になる話ではありません。嫌いなものは嫌いです。
英語嫌い多いと思う。先生も実は嫌いだ。
理由があります。昔は、あなたたちと同じでした。何なんだこの英語の先生たちは、という感じです。いまは別の理由です。
英語が話せるからすごい、と思っている連中がいる。英語で階級ができる社会があるのを知っています。それが嫌なんです。
英語で知的能力を判断される場面も経験しました。「お前は英語ができないから」の世界です。アメリカでもそうだったし、日本に帰国してからも、それでジャッジされました。そうすると、なんやねんってなるだろ。
ついでに言っておくと、先生の英語はいま化石化しています。そんなに上手とは言えません。恥ずかしくないレベルとは言えるようになりましたが、それだけです。
好きになる必要はありません。「英語できないんで」と言わなくて済むところまで行けば十分です。
単位のためでも構わんが、結果なんもスキルみにつかないって、人生における時間の無駄。
A university degree in Japan generally requires about 124 credits, or roughly 62 two-credit courses. Credits and grades record the courses you have completed, but they do not necessarily show what you can do in English. Many students report little improvement in their foreign language skills. It is therefore useful to develop skills that you can demonstrate, as well as to earn the credits required for graduation.
© Koach時間と金額Hours and Money
仕組みの話をしたので、次はあなたがこの科目に何を払っているかを見ます。
この授業は2単位です。制度上、90時間の学修が前提になっています。授業に出ている時間は22.5時間。残りの67.5時間は教室の外です。
授業料は、北海道大学の学部で年額535,800円(半期267,900円)、入学料282,000円です(出典:北海道大学公式サイト)。払っているのは、あなたか、あなたの家族です。
半期267,900円を、その学期に取る科目数で割ってください。1科目あたりいくらか、自分で計算してみてください。こちらからは金額を言いません。自分の数字で見たほうが正確です。
そのうえで、90時間はあなたの人生の90時間です。戻ってきません。
A two-credit course assumes 90 hours of study, including 22.5 hours in class and 67.5 hours outside class. Annual tuition is 535,800 yen, or 267,900 yen per semester. Dividing the semester tuition by the number of courses you take gives one way of considering the cost of each course. The time you spend is also an investment. Consider what you would like to learn from it.
まず、お金の話からMoney First
いまのは、あなたが払う側の金の話でした。ここからは入ってくる側の話をします。きれいごとを先に置くと嘘くさくなるので、順番を逆にします。
英語ができる人とできない人で、待遇に差が出る業界と職種があります。これは事実です。
- 外資系 入り口の条件になっていることが多い。差が大きいのはこの領域です
- IT 読める資料の量が変わります。日本語に翻訳されるのを待つ人と、出た日に読む人では、扱える情報量が違う
- 研究職 評価の場そのものが英語です。論文も学会も
- 製造業 昇進の条件に語学要件が入っていることがあります
差の大きさは業界によります。ただ、差があること自体は変わりません。
お金の話を最初にするのは、それが「選べる仕事の数」に直結するからです。
嫌な条件を出されたときに断れるかどうかは、別の行き先があるかどうかで決まります。行き先が1つしかなければ、条件がどうであれ受けるしかありません。
English can expand your employment options in fields such as IT, research, manufacturing, and work for foreign-affiliated companies. Income matters because it affects the choices available to you, including the kinds of work you can accept or decline.
ただし、この数字には裏があります
「英語ができると年収が上がる」という数字は、あちこちに出ています。転職サービスの登録者データでは、TOEIC 800点台で平均487万円、900点台で534万円という数字が出ています。ただしこの種の数字は、対象者が何人なのかも、どう集めたのかも公開されていないことが多い。そのまま信じるものではありません。
もっと大事なのはこちらです。
学歴を統制して統計的に分析すると、英語力そのものが賃金の上昇に与える影響は、ほとんど残りません。(寺沢拓敬『「日本人と英語」の社会学』研究社、2015年)
同じ研究は、英語を身につける機会が、性別・学歴・職業によって著しく不均等であることも示しています。家庭の環境が、英語学習のあり方を大きく左右する。
つまり、順序が逆のことが多いということです。英語ができる人が稼いでいるのではなく、稼げる位置にいる人が英語もできる。さきほど「英語で階級ができる」と書いたのは、この話です。
では、やらなくていいのか。逆です。すでにその位置にいる人にとって、英語は追加の飾りにすぎません。いない人にとっては、数少ない、自分で取りに行ける手札です。大学の授業は、その機会が誰にでも同じ形で置かれている、数少ない場所です。
Recruitment figures sometimes associate higher TOEIC scores with higher incomes, but these figures require caution when the sample and methods are not reported. They do not establish that improving English will itself raise your income. Terasawa Takunori discusses how access to English is related to education, gender, and occupation, and how the apparent relationship with wages changes when education is taken into account (The Sociology of Japanese and English, Kenkyusha, 2015). English learning opportunities are not equally available to everyone. A university course can provide an opportunity to develop these skills regardless of your previous access to them.
身の回りは、もう国際化していますEnglish in Everyday Work
「差が出るのは外資や研究職の話だろう」と思ったなら、次を見てください。
海外に行かなくても、相手のほうが来ます。それに、こちらから出ていくしかない事情も、もう始まっています。
岩手・盛岡の酒蔵
日本酒を作って、日本で売る。それだけでは伸びません。人口が減っています。買う人の数も、買う力も落ちています。少子化です。
では、どうするか。購買力のあるところに売り込みに行くだろ。ヨーロッパ、北米、アジアの都市。
売り込みに行くというのは、商談をするということです。輸入業者と条件を詰める。レストランの料理人やソムリエに、味の違いを説明する。この銘柄は何が違うのか、どの料理と合うのか。
作っている本人がそれを説明できなければ、代わりに誰かが説明します。そして、その人が取り分を持っていきます。
神戸の酒屋、コンビニ
こちらは逆です。客のほうが外から来ます。コンビニでは、働いている人が外から来ています。指示を出す側も、受ける側もです。
介護と看護の現場
ここは制度として受け入れています。経済連携協定にもとづいて、インドネシア・フィリピン・ベトナムから看護師と介護福祉士の候補者が来ています。同じ職場で、一緒に働きます。
「自分は行かないから関係ない」が通用する場所は、思っているより少ない。
Consider a sake brewery in Morioka seeking customers overseas as the domestic market contracts. Selling abroad involves communicating with importers and explaining the characteristics of the product to chefs and sommeliers. Being able to do this directly gives the producer more control over how the product is presented. A liquor shop in Kobe or a convenience store may need to communicate with customers and coworkers from other countries. In nursing and care work, Japan also accepts candidates from Indonesia, the Philippines, and Vietnam. These are examples of situations in which language skills may be needed without moving abroad.
企業の方針が大きく変わったのは 2009年から2010年ごろです。あのあたりから「英語ができる人材」を前提にした採用と配置が普通になりました。そして、戻っていません。
Working with people from other countries is already part of many jobs in Japan. This includes local businesses, retail, and care work, as well as large companies.
© Koach世界基準のスキルとしてA Baseline Skill
ここまでは、日本の中で何が起きているかの話でした。同じことが、外の枠組みでも言われています。
OECD は2006年に、21世紀に豊かに生きるために必要な力のひとつとして、「異なる背景を持つ人たちと同じ空間で生きていく能力」を挙げました。
中身は3つです。意思疎通ができること。異文化を理解できること。協力できること。そして、この3つの土台には言語があります。
これは古い話ではありません。いまの版でも同じです。OECD の Learning Compass 2030 は、身につけるべき力のひとつに「対立やジレンマへの対処」を挙げています。PISA 2018 のグローバル・コンピテンスも、異文化の場面に知識と態度を組み合わせて対応できるかを見る枠組みです。CEFR が2020年の改訂で「仲介」を正式に置いたのも、同じ方向の動きです。
翻訳AIはここを肩代わりしてくれません。
読み書きなら、かなりのところまでいきます。ただ、人と話している最中にAIは間に合わない。相手の言ったことにその場で反応する、うまく言えなかったところを言い直す、聞き取れなかったところを聞き返す。ここは自分の口と耳でやるしかありません。
それと、自分で英語が読めない人は、AIの出した英語が正しいかどうかも判断できません。道具を使う側に立つには、道具なしでもある程度動ける必要があります。
「AIは間違えるから人間が要る」とは言いません
この理由づけは使いません。AIの精度が上がった時点で消えるからです。ここでは、5年後にも残る話だけをします。
AIが人を超えていくのは、言葉の運用そのものというより、知識に届く量と速さです。だから、そこを理由にして語学を勧めることもしません。
議論は翻訳できません
機械翻訳が運べるのは、話の中身そのものです。ただし議論は、中身のやり取りであると同時に、言い方とタイミングのやり取りでもあります。
どこで口をはさみ、どこで引き、どこまで譲るか。相手の表情が変わったのを見て言い方を変える。ここは、翻訳をはさんだ時点で失われます。
通訳を通した議論では、譲歩や強調の度合いを自分で決められません。「〜かもしれません」にするか「〜です」にするかを、機械が選ぶことになります。交渉の場で、その選択をしている人が、立場を持っている人です。
リアルタイム翻訳の遅れがなくなっても、この構造は変わりません。性能の問題ではないからです。
だから、文法と会話は対立しません
議論に要るのは、正確さというより使い分けです。言い切るか、含みを持たせるか。どう譲るか。相手の言い分をいったん認めてから、どう切り返すか。
これも文法です。ただし正誤を問う文法ではなく、使うための文法です。この蓄えが自分の中になければ、会話の最中には選べません。
「会話重視か文法重視か」という言い争いは、ここでは成立しません。議論をするために形が要る、というだけの関係です。
The reason for practicing English is not simply that AI sometimes makes mistakes. Translation tools will continue to improve. In a discussion, however, you also need to decide when to speak, how strongly to state a view, when to concede a point, and how to respond to the other person. Using English yourself gives you more direct control over these choices. Grammar is useful here because it provides ways to express certainty, qualify a statement, acknowledge another view, or make a request. The aim is to make these choices available during conversation through practice.
Communicating and working with people from different backgrounds requires more than exchanging translated information. You need to respond, check your understanding, and explain again when necessary. Translation tools can support this process, but practicing these interactions yourself remains useful. Reading English also helps you assess whether an AI-generated response conveys what you intended.
「今しかない」という話ではないLearning Beyond Graduation
これは「今しかない」という話ではありません。
人生は決断の連続で、いまいる場所はその結果です。この授業を取ったことも、取らなかったことも、決断の結果です。そして卒業したあとも、決断は続きます。楽になる時期は来ません。
そのうえで、条件は悪くなっています。無理ゲーに近い環境ができ始めている。
だからこそ、その中で何を持っているかが効いてきます。大学は、あなたが何を持っているかを証明してくれません。成績表に書かれるのは「単位を取った」ことだけです。
You can continue learning after graduation. The choices you make now contribute to the skills and experience available to you later, but they are not your last opportunities to learn. A degree alone does not demonstrate all of these abilities.
© Koachなんで英語なのか:世界史の話An Accident of History
ここまで、英語をやる理由を書いてきました。では、なぜ英語なのか。ここを飛ばすと、この授業はただの押しつけになります。
英語が優れた言語だから世界語になったわけではありません。
19世紀にいちばん広い植民地を持っていたのがイギリスで、20世紀にいちばん強かったのがアメリカだった。それだけです。
かつては別の言語が同じ位置にいました。ラテン語も、アラビア語も、フランス語も、それぞれの時代に「これができないと話にならない」言語でした。いまはたまたま英語です。
だから:
- 英語ができないことは、あなたの能力の話でも、頭の良さの話でも、価値の話でもありません
- 同時に、いま情報と金と仕事が英語に集まっているのは事実です。だから使う
メリットとデメリットの両方があります。
よく出る質問がこれです。なんで英語なのか。中国語ではだめなのか。まっとうな疑問です。数字で見るとこうなります。
- 話者の数だけなら中国語のほうが多い
- ただし使われている国の数は英語が最も多い。ここが効きます
- 国連の公用語のひとつ
- 学術論文の大半が英語で書かれている
だから、迷ったら英語です。ただし、中国語をやりたい人はやってください。それも正解です。ひとつ目の外国語を身につけた経験は、次の言語で必ず効きます。
English is widely used across countries and in academic communication, which makes it a practical choice if you have no particular preference. If you are interested in Chinese or another language, that is also a good reason to study it. Experience learning one foreign language can help you learn another.
メリット
アクセスできる情報の範囲が変わる。仕事の選択肢が変わる。逃げ道ができる。
デメリット
英語圏のものの見方が「標準」に見えてくる。英語になっていない情報が、存在しないことにされる。何が語られ、何が語られないかを、英語圏のメディアが決めている。
英語演習では、そこも扱います。第13回の問いはこれです。
Where does the English you are learning come from, and who benefits from you learning it?
(あなたが学んでいる英語はどこから来て、あなたが学ぶことで誰が得をするのか)
答えは出ません。出ないことが正しい。ただ、崇める対象から道具に降ろすことはできます。崇めている限り、間違えられません。道具として、雑に使ってください。そのほうが速く上達します。
担当教員が高校のとき、英語の教師に言われた言葉です。
「お前はバカすぎるから、日本の大学にいけない、まずは働け」
The international position of English reflects the history of the British Empire and the influence of the United States. It does not mean that English is inherently better than other languages, or that a person who does not speak it is less capable. English currently provides access to many sources of information and opportunities for work. At the same time, relying only on English can make other perspectives less visible. In Session 13, we will consider the history behind the English we learn and who benefits from its use.
英語以外の言語についてThe Other Languages
ここまで英語の話をしてきました。ただ、日本に来ている人は、英語圏の人ではありません。
米国は10位で6.6万人です。上の顔ぶれが話しているのは、中国語、ベトナム語、韓国語、タガログ語、ネパール語、ポルトガル語、インドネシア語です。
英語は、互いの母語が違うときの共通語として効きます。そこは変わりません。ただし、もうひとつ言語を持っていると、効き方が変わります。
そして、スペイン語やポルトガル語は、日本で話せる人がとても少ない。英語ができる人は大勢いますが、スペイン語ができる人は多くありません。希少なぶん、できたときの価値が高い。
北大では初修外国語も取れます。ひとつ目の外国語を身につけた経験は、次の言語で必ず効きます。逆も同じで、他の言語をやった経験は英語に効きます。どれをやるかより、ひとつ目を最後までやるかどうかです。
Many foreign residents in Japan come from countries where English is not the main language. In the 2024 figures shown above, residents from the United States account for a much smaller group than those from China, Vietnam, Korea, and several other countries. English can serve as a shared language, but learning another language can allow you to communicate with people in different ways. Hokkaido University offers beginner courses in several languages. Choose a language that interests you and continue studying it long enough to develop usable skills.
手に職としての外国語Skills You Can Continue to Use
歴史の偶然でこの位置にある言語です。そのうえで、身につける価値がどこにあるか。
語学は、一度身につけば一生使えます。技術のように陳腐化しません。
- 転職のとき 選べる範囲が変わります
- 副業 翻訳、通訳、オンライン講師。実際にやっている人は多い
- 情報収集 これがいちばん大きい
学び続けることが前提の時代です。最新の情報にアクセスできて、海外の優秀な人から直接学べる。この差は、10年経つと相当な開きになります。
Language skills can remain useful across changes in jobs and technology. They can broaden your employment options and the information you can access. Continuing to use a language over time gives you further opportunities to learn.
© Koachとはいえ、全員がやるべきなのかDoes Everyone Need English?
ここまで勧める理由を並べました。反対側も書いておきます。
正直に書きます。全員に英語が絶対必要だとは思っていません。
他に得意なことがある人はいます。英語がなくても十分にやっていける道もあります。「英語は絶対必要です」と言い切る立場と、現実のあいだには、ギャップがあります。教える側がそれを認めないのは不誠実だと思います。
それでも勧める理由は、外国語をひとつ習得した経験そのものが効くからです。
- 多様性が、言葉ではなく実感として分かる。通じない相手と何とかする経験を通してしか、これは入りません
- 文化の違いが理解できる。言語が違えば、切り分け方が違う
- 自分の言語と、自分の考え方が見える。比べる対象ができて初めて、自分の輪郭が分かります
母語以外の言葉を学ぶと、自分の中の世界観に質的な転換が起きます。
たとえば英語では、文に主語と動詞が必ず要ります。日本語では要りません。「幸せ。」で文になります。英語をやって初めて、自分がふだん何を言わずに済ませているかが見えます。その一覧が 英語と日本語の作りの違い にあります。
Comparing English and Japanese can help you notice how each language works. For example, a complete English statement usually includes a subject and a verb, while Japanese often leaves the subject unstated. Learning another language gives you a basis for examining patterns you may otherwise take for granted.
無理しなくていい人もいます。他にやりたいことがはっきりある人は、そちらに全部投入したほうがいい場合もあります。ただし、必修である以上は時間を使います。使うなら、何か持ち帰ったほうが得です。それと、どうせやるなら楽しんだほうがいい。苦行にした時点で、まず続きません。
Not everyone needs English for the work or life they choose. Learning a foreign language is nevertheless valuable as an opportunity to experience different ways of expressing ideas and to examine your own language and assumptions. If you have another field you want to pursue, that deserves your time too. Since this course is required, consider what you would like to gain from the hours you spend here. Finding some enjoyment in the process will help you continue.
だから、どうするかPutting This into Practice
やることには順番があります。この順番でないと効きません。
授業外の67.5時間 制度上、この授業の3分の2は教室の外→
成績評価について 何をどこまでやれば、どう評価されるか→
出典:文部科学省「英語教育に関する調査研究(英語力に関する調査分析)」2026年4月公表/文部科学省「全国学生調査」/北海道大学「入学料及び授業料」
志柿浩一郎 北海道大学 大学院メディア・コミュニケーション研究院
SHIGAKI Koichiro, Research Faculty of Media and Communication, Hokkaido University
kshigaki@imc.hokudai.ac.jp
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